以下の内容は九州大学との共同研究に関する内容です。
出典:再生医療学会
〇濱野さゆり1, 2、井浦陽介3、山下大輝1、本村絢3、杉浦梨紗1、前田英史1,4
1九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座歯科保存学研究分野
2九州大学大学院歯学研究院・OBT研究センター
3阪神化成工業株式会社
4九州大学病院歯内治療科
画像解析を用いたiPS細胞の品質評価に関する研究結果
背景および目的
iPS細胞(人工多能性幹細胞)は培養過程でヒューマンエラーなどにより品質が変化することがあるため、品質管理が重要です。顕微鏡下での観察は簡便かつ低侵襲な方法として注目されていますが、iPS細胞の品質を評価する方法は未だ確立されていません。そこで本研究では、顕微鏡画像を用いてiPS細胞の品質を評価する方法を検討しました。
材料および方法
- 細胞:ヒト皮膚線維芽細胞由来iPS細胞 (RIKEN: HPS No.0063)
- 培養:iPS細胞培養液 AK03(Ajinomoto)、iPS細胞基質 iMatrix-511(Matrixome)
- 観察装置:remocell®(阪神化成工業開発品)
結果
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細胞形態の観察:4日、7日、10日間培養したiPS細胞の形態をremocell®で撮影しました。10日間培養した細胞は、中央部の粗造感が増加しました。
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死細胞の確認:4日、7日、10日間培養したiPS細胞には死細胞が認められませんでした。
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OCT3/4およびKi67の発現:蛍光染色を用いて4日、7日、10日間培養したiPS細胞のOCT3/4およびKi67の発現を確認しました。10日間培養した細胞では、中心部における発現が低下しました。
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経時的変化:7日~10日間培養したiPS細胞におけるOCT3/4およびKi67の発現変化と形態変化を観察しました。8日以上培養した細胞では、発現低下の割合が著しく増加し、観察画像における粗造感も増加しました。
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均一性の評価:OCT3/4の発現が均一なコロニーと不均一なコロニーを分類し、それぞれのIntensity SDおよびHomogeneityを数値化しました。不均一コロニーでは、Intensity SDが有意に上昇し、Homogeneityが有意に減少しました。
考察および結論
長期間培養したiPS細胞の中央部は、観察画像における粗造感が増加し、OCT3/4およびKi67の発現が低下しました。remocell®で得られた観察画像のIntensity SDおよびHomogeneityの測定は、多能性および増殖能が低下したiPS細胞の識別に有用である可能性が示唆されました。
謝辞
本研究の観察画像の解析に関して、株式会社Quastellaにご協力いただきました。
製品情報
自動培養モニタリングシステムremocell®は、インキュベーター内蔵型IoT機器であり、明視野自動定点観察とクラウドデータ管理を特徴としています。
本製品は2024年12月に発売予定です。
この研究により、iPS細胞の品質管理において、画像解析を用いた新しい評価方法の可能性が示されました。remocell®を用いた観察と解析により、より精度の高い品質管理が期待されます。